2024年5月13日にカナダの作家、アリス・マンローさんが亡くなった。2013年にノーベル賞文学賞を受賞、「短編小説の名手」と言われている。たしかに昨今のノーベル文学賞の中では、とても読みやすい作品が多い。新潮クレストブックスシリーズで何冊か出ている。人生の中の、ありふれた、小さなことを実にデリケートな筆致で描きながらも、生の苦み、といったものをそっと、さりげなく読者に突きつけてくる。そして時間の扱い方も実に巧みで、またカナダの風土が伝わってくる。人は遭遇した出来事を自分流に取捨選択し、記憶を自分の都合のよいように作り上げてゆく、人生を生きることはそれらを一種、技術のように使いながら進んで行くのかもしれない。そんなことを考えさせる、たとえば『記憶に残っている事』などがある。日本で言えば昭和6年生まれ。
zensakka
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