新聞の斜め読み、その2 エンタメ季評
情景が浮かび心情をすくい上げる、いい文章を書くなあと常々感じているのが
麻宮好(あさみやこう)だ。「恩送り泥濘の十手」で第一回警察小説新人賞を受賞して以降、一作ごとに腕を上げている。
最新刊「龍の眼」は、上質の砥石の横流しを疑われる村に隠密同心が調査に赴く物語である。ただの役人の振りをして村人たちと交流を持つが、その村には意外な秘密があり….。
絶対に入ってはいけない禁足地の存在、夜にしか出てこない謎めいた子どもなど、興味をそそるモチーフが続々と登場する。村の不自然な特徴には気づく読者はいるかもしれないが、なぜそうなったのかという理由こそが読みどころ。現代にも通じる、人の愚かさと悲しさが伝わってくる。砥石の切り出しの描写も一読の価値あり。(一部分です)
朝日新聞 2024年9月25日 夕刊 より 森本
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